Case.3 診療所の増改築工事

2025.6.25


世代と想いを継ぐ、アートが息づくクリニック


80年以上にわたり地域医療を支えてきた歴史ある診療所で、ひ孫世代のご姉弟が眼科医院として受け継いだ高知県安芸市の「すぎもと眼科」。2000年竣工以来の建物を、これからの医療と時代のニーズに合わせ、増改築工事を行いました。今回のプロジェクトで目指したのは、既存の木造建築が持つ温かな佇まいはそのままに、高度な医療に対応する機能性と、訪れる人の心を和ませる安らぎを両立させること。休診期間をほとんど設けない工事のため、患者様や近隣の方々への配慮を徹底しながら、計画を進めました。空間の主役は、クライアントが長年ファンであった画家・山口一郎氏のアートワークです。新しい医院のロゴやサインだけでなく、院内の壁や扉そのものをキャンバスに見立て、ライブペインティングで彩るというご要望を受け、内装を設計。木のやわらかな質感と、のびやかで心和むアートが融合し、精密な検査や手術を行う空間でありながら、患者さまがリラックスできる雰囲気を作り出しています。

・すぎもと眼科 https://www.sugimoto-ganka.jp/


既存の木材をいかした受付・待合室
床には高知県産の無垢材を使用
診察室
リカバリースペース
香川県在住の画家・山口一郎氏による手描きの絵
リニューアルの内覧会では、山口一郎氏によるライブペインティングも行われました。

工事概要 〜2棟の改修と1棟の増築工事〜


今回の増改築では、受付・診察室のある「A棟」とバックヤードの「B棟」、この両サイドの建物をそのまま残しながら、中央のC棟のみを解体。その場所に、新たに「手術棟」を増築しました。既存の建物を傷つけずに中央部分だけを入れ替える事例は少なく、綿密な計画と施工技術が求められました。また、法改正によって現行の建築基準に適合しなくなっていたA棟・B棟の改修も実施。医院全体の安全性と機能性をアップデートしています。


▪️基礎工事

完成後には見えなくなる、建物の土台。基礎工事は、地震などの自然災害から守る最も重要な工程です。見えない部分の品質こそが真の安心に繋がることから、入念な調査と的確な施工で、安全を支える頑丈な土台を築きます。

▪️室内工事

理想のデザインを形にする前に行う、建物の性能を決定づける重要な工程。壁の内側には耐震補強や断熱工事を行い、長期に渡って続く安全性と快適性を実現します。

既存の木梁を強度の高いH型鋼で補強。木と鉄を組み合わせたハイブリッド構造により、見た目の良さと耐震性を両立させました。
枠組壁工法の構造に、両面から構造用パーティクルボードを貼り付けることで、耐震性に優れた強固な耐力壁を形成。釘の種類や長さ、打ち込む間隔まで、細かい規定に沿って施工しています。
増築棟の天井や壁には、断熱材を隙間なく敷き詰め、断熱性の高い建物に。一年を通じて快適な室内環境を保ちます。